前回次男入院No.2の続きです。
転院前夜の一時帰宅
前回の記事で書き忘れたのですが、転院前夜の19時頃から2時間ほど、転院準備のために私だけ一旦自宅に戻る許可をもらいました。
5日ぶりの自宅は、なんだかいつもと違う空気でした。
今は長男と夫と猫たちだけの自宅。
1日も早く次男と一緒に帰って来たいけれど、それがいつになるのかこの時点では見当がつかず、自宅に戻っても全然落ち着くことができませんでした。
夫と長男は一瞬でも私が家に戻ったことが嬉しかったようで、コーヒーを淹れてくれたり湯船にお湯を張ったりしてくれました。
長男は口にはしませんが、心配をしているのも淋しい思いを抱えているのも伝わってきます。
次男の入院を機に味噌汁を作るようになった長男が、この時に玉ねぎのお味噌汁を作って食べさせてくれました。
私が普段使っているお味噌とお出汁だから同じ味になるのは当然といえば当然なのですが、お味噌が少な目で、私の作るお味噌汁と同じ薄さだったのが嬉しかったです。
一切料理をしなかった夫も、ご飯を炊いてくれたりほうれん草を茹でてくれたりと、仕事だけでも大変なのに、帰ってからも慣れない食事の支度を頑張ってくれていました。
どれも優しい味がして、美味しくて、ホッとしました。
早く次男と一緒に帰って来たいと思いました。
明日は次男が転院する日。
もしかしたら何ヶ月も帰ってこられなくなくなるかもしれないし、兄弟すら簡単には面会できない病棟への入院になります。
だから明日は、長男は学校ですが休ませて、家族全員で転院先まで送って行くことにしました。
翌朝9時に病院に迎えに来てもらうようお願いをして、病院に戻りました。
退院、そして転院
浅い眠りをつぎはぎしながら朝を迎えました。
次男の熱は朝6時の時点で38℃ありましたが、まずまず眠れたようでした。
9時頃に、主治医の先生が前日の血液検査の結果と抗体検査の結果を持って来てくれて、「転院先の病院は大きな病院で、次男くんを診てくれることになったチームは素晴らしく、主治医の先生は優しい方ですよ」と教えてくれました。
不安でいっぱいの次男と私はそれを聞いて少しホッとしました。
「お世話になりました。たくさん話を聞いてくださってありがとうございました。元気になって帰ってきます。」
とお礼を言って病室を出て、手続きを終えて退院しました。
優しい先生たちのおかげで次男の病気の心配だけできたことは救いでした。
先生や看護師さんたちに対する悩みまで出てきたら余計気が休まりませんから。
スタッフさんたちに恵まれたことはありがたかったです。
駐車場で夫と長男が待っていました。
6日ぶりの家族全員集合です。
普段ケンカばかりの長男と次男ですが、この時ばかりは長男も次男に優しくしていました。
夫と長男と次男は双方会えて嬉しそうでしたが、それぞれの胸にはモヤモヤが渦巻いていて、次男の表情は笑っていてもどこか曇っていました。
どんな会話をしたのか思い出せませんが、あっという間に転院先の病院に着いてしまい、次男の顔が一層こわばったのは覚えています。
長男とはここでバイバイして、夫は結果を一緒に聞くために夕方また病院に来てもらうことになりました。
夫と長男はどんな思いで次男を見送ったのだろうと思いながら手を振りました。
転院先の病院は、なるほど大きな病院でした。
入院するのは小児科で、廊下には抗がん剤で頭髪の抜けた小さい子が元気に歩いていました。
詰所に「よろしくお願いします」と挨拶をすると、この日の次男の担当だという看護師さんが駆け寄ってきてくれて、病室に案内してくれました。
案内された病室は、トイレもシャワーも洗面所も付いていて、ホテルと見間違うような個室でした。
一瞬喜びかけましたが、「白血病の患者さんはどうしても長期入院になるので…」と言われて、“ここは病院だった”と正気に戻りました。
着いて早々に主治医の先生が来て挨拶してくれました。
穏やかに話す優しそうな男の先生で、頼りになりそうな方でした。
威圧的な先生でなくて心底ホッとして、あとは先生に全て任せるしかないと次男に話しました。
私がやるべきことは、次男のサポートと、先生に次男の状態を報告すること。
“虫が入ると大変なので窓は開けないように”と言われた病室に、次男は一体いつまでいるのだろう。
そんなことを考えながら、このあとすぐに行われる骨髄検査の方法を先生から教えてもらっている次男の様子を眺めていました。
骨髄検査
先生は次男に、痛いところはないか、体調はどうかなどを聞いたあと、今から行う骨髄検査のことを次男にわかる言葉を使って説明してくれました。
「うちでは赤ちゃんも16歳のお兄ちゃんも麻酔で寝てもらってる間にやるから、痛くもなんともないから大丈夫だよ」と言ってくれて、次男も安心していました。
そして先生は、すぐに骨髄検査の準備をするよう一緒に来た他の先生や看護師さんに指示をして、次男はベッドにうつ伏せになるよう言われました。
ちょうど腕立て伏せをするような格好で、顔を右に向けるよう指示されました。
私が立っている方を向くよう言われたので次男の顔が良く見えていたのですが、次男の左手に刺した点滴の針から麻酔が入って間も無く、先生が私に
『目を開けたまま寝ちゃう子もいるので』
と言い、言い終えるのと同時くらいのタイミングで、次男が目を開けたまま眠りに落ちました。
麻酔とはいえ、死んだ瞬間の次男を垣間見たようでドキッとしました。
先生が、『お母さんは出ていてください』と言ったのでそのまま病室の外に出ると、先ほど病室に案内してくれた看護師さんが、何やらたくさんの書類を持って談話室のような空間に案内してくれました。
入院手続きやら診療計画書やら治療の同意書やら承諾書やら、そんな類の書類を5〜6枚書いていたら、全部書き終わる前に『もう病室に戻っても良いですよ』と言われました。
骨髄検査はあっという間に終わりました。
病室に戻ると、次男はもう目を覚ましていました。
「もう起きてたんだね。もう終わったよ。」と声をかけると、そばにいた看護師さんが、『まだ視界がボヤッとしてはっきりは見えていないと思います』と教えてくれました。
五分ほど経ってから次男が『見えてきた』と言いました。
ただでさえ不安でいっぱいの入院。
痛い検査が眠っている間に終わってくれてホッとしましたが、この検査の結果を待つ時間はとてつもなく長く感じ、緊張したまま結果を待ちました。
次男は38℃を超える発熱でしんどそうな様子で、テレビを見たり眠ったりを繰り返していました。
骨髄検査の結果報告
夕方、夫がもう一度病院に来てくれました。
看護師さんに聞くと、次男と面会しても良いということだったので、夫は一旦次男の病室に面会に来ました。
長男と帰るときに神社に寄って、病気平癒御守を買って来たと言って持って来てくれたので、早速病院のベッドに結びつけました。
ついでに私にも健康お守りを買ってくれました。
ほどなくして、先生から結果報告があるので別室に来てくださいと呼ばれたので、次男を病室に残して夫と別室に向かいました。
『骨髄検査の結果を見る限り、現時点では白血病ではありませんでした。』
全身から力が抜けました。
よく覚えていないですが、「良かった〜」って言ったんだと思います。
最初の病院では、急性白血病と骨髄異形成症候群の疑いで今回の病院を紹介されたのですが、二つとも該当しませんでした。ちなみに、骨髄異形成症候群というのは、白血病の前段階のことらしいです。
でも先生はそのあとで、『血球貪食像を認める※マクロファージが少し見られます。』と言いました。※白血球の仲間である“単球”が、血管から組織へ出ていくと“マクロファージ”になります。マクロファージは、体内に侵入したウイルスや細菌などを飲み込み(これを貪食どんしょくといいます)、飲み込んだウイルスなどの情報をリンパ球に伝える役割をしています。
※過去記事で血液の働きについて少し記載していますので、興味のある方は下のリンクからどうぞ。「血液の働き」の項です。
その写真がこちら。
※マクロファージが赤血球などの自分の血球を貪食している様子が写っています。
診断ではなく疑いですが、“血球貪食(どんしょく)症候群”という言葉が先生の口から出ました。
血球貪食症候群とは、赤血球や白血球・血小板などの血球が、マクロファージによって食べられて減ってしまう病気です。
その原因は様々で、遺伝子の異常によるもの(原発性)と、何らかの病気が引き金となって起こるもの(続発性)とがあり、続発性の原因には主にウイルス感染症、がん、自己免疫疾患、薬剤アレルギーなどがあります。
ですが、この日の検査では、若い赤血球や若い血小板が見受けられ、きちんと作られていることはわかり、白血球や血小板が少しずつ減ってはいますが経過観察できるレベルだということのようでした。
現時点では白血病ではなかったことははっきりしましたが、結局不明熱の原因はわからないままでした。
でも、今回同時に骨髄染色体検査も外注してくれており、その結果は二週間後に出ると言われました。
骨髄染色体に異常が見つかれば、今は白血病を発症していないけれども後々発症する可能性が高まるということのようで、この結果が出るまでまた不安な日々を送らなければならなくなりました。
本当に昨年末から何回命に関わる怖い病気の疑いを晴らすための抗体検査を行い、心臓を口から出しそうにな裏ながら結果を待つ日々を乗り越えてきたことか。
結果が出るたびに『良かった〜』といって来たけれど、私と次男の寿命は縮まっている気がしてなりません。
“いい加減に解放してよ神様…次男が何をしたって言うの”
この半年ずっとそんな心境でいます。
私は先生に解熱剤を使用したくないと伝えていたので、来た時点で処方されてはいましたが、先生も解熱剤なしでの体温の動きが見たいということで、退院の目処は立たぬまま、脱水予防の点滴のみで経過を見ていただくことになりました。