鼠径(そけい)ヘルニア 日帰り手術の記録

次男が幼稚園の年少さんだったある日、お風呂場で次男の左足の付け根のあたりに不自然な膨らみがあることに気がつきました。

外傷はなく、次男に聞くと痛みもないとのこと。

この時点で「恐らくヘルニアだな・・・」とは思っていましたが、特に痛がる様子もないのでこの時は放置。

見た目以外は特に問題は起きませんでしたが、年長さんになった頃から次男が患部を手で押さえる仕草が目につく様になりました。

「痛い?」と聞くと、相変わらず「痛くはない」との返事。でも違和感はあるようで、自分で押して戻したりしていました(^^;)

人の目につく場所ではないですが、温泉やプールなどでたまたま見られてからかわれたりしたら可哀想だという思いと、突然痛みが出る危険があったのとで、夫と話して「入学前に手術を受けよう」ということで意見が一致。

たまたま風邪で受診していたかかりつけ医でついでに診てもらうと、やはり「鼠径ヘルニア」だろうということでした。

ですが、私たちの住む町の病院では、ヘルニア手術は1〜2泊の入院を要するところばかり・・・。

癇癪持ちの次男と私(!)には病院で一夜を過ごす自信はありません。夫と長男もいます。

自宅に戻って即行近隣でヘルニアの日帰り手術を行なっている病院を調べ、受診することにしました。

鼠径(そけい)ヘルニアとは

鼠径ヘルニアとは足の付け根に起きる脱腸のことです。

同じ現象がおへそに起きたものは「臍ヘルニア」と呼びます。俗に言う「出べそ」です。

ヘルニアと聞くと一般的には「椎間板ヘルニア」を連想し勝ちですが、体内の臓器や骨などが本来あるべき部位から脱出した状態を総じて「ヘルニア」と呼ぶそうです。

「鼠径ヘルニア」とは、本来であれば出生時には閉じているはずの「鞘状突起(しょうじょうとっき)」が、何らかの理由で開いたまま産まれてきたために、そこに腸が入ったり出たりする状態のことを言います。

※病院からいただいた書類です。

腸が出入りしているだけの時は痛みはなく(違和感はあるようですが)、見た目以外特に問題はないのですが、腸が鞘状突起の中に入り込んでいる状態の時に稀に根元の筋肉に腸が締め付けられる場合があり(この状態を絞扼(こうやく)と呼びます、これを6時間以上放置すると腸に穴が空いて腹膜炎になり、大きな手術をして腸を切らなければいけなくなるそうです:(;゙゚’ω゚’):

1000人に一人の割合で起こると言われています。

ですが!次男が掛かった病院からの指示では、

・絞扼が起きた場合は当人は激痛により狂ったように泣き、

ヘルニアの膨らみが硬くなって触らせてくれなくなる

ので、まず見過ごすことはないとのこと。

なので、

①絞扼が起きた時は慌てずに、飲食をしている場合はすぐに中止し(緊急手術が必要になった場合に備えて。まぁそもそも絞扼が起きた時点で飲み食いなんてしている余裕はなくなっていると思いますが)、

②病院に連絡を入れてから自家用車かタクシーで病院に向かってください※救急車は使わない

とのことでした。

6時間も放っておけるレベルの泣き叫び方ではないということに尽きると思います。

知人の息子さんは赤ちゃんの時に絞扼が起きて泣き叫び、夜中に病院に駆け込んで緊急手術を受けました。その息子さんはこの痛みを経験したおかげで痛みにかなりの免疫ができ、ちょっと転んだくらいではまず泣かなくなったそうです(笑)

事前検査と手術

いざ手術を受けよう!というわけで、自宅から車で一時間の距離にある市外の病院へ向かいました。

主治医の先生は細身で体育会系気質の頼れるタイプの男性でした。

先生は、私たちが市外から紹介状も持たずにこの病院を受診したことに触れ、「〇〇(私たちの住む町の名前です)でもヘルニアの手術できるとこあるしょ。△△病院に俺の知り合いの腕のいいのいるよ〜」なんて話をしてくれました。

奇遇にも先生の言った病院が息子たちのかかりつけの病院でしたが、「日帰り手術受けたさにこの病院を探し出し、はるばるやって参りました」と言ったら笑われました。

兎にも角にもまずは検査、検査です。

次男が手術のために受けた検査は、①心電図検査、②血液検査、③胸部レントゲン撮影の三つ。

そのあと、看護師さんから酸素マスクを用いて「手術が始まる前に次男くんにこのマスクをつけます。このマスクから眠くなる空気が出てきて、次男くんはすぐに眠っちゃうよ。寝ている間に手術が始まって、次男くんが起きた時には全部終わっているからね」という説明がありました。

わかったようなわからないような、でも不安でいっぱいの面持ちだった次男の顔を思い出します。

手術の内容

主治医からの説明は下記の通りでした。

①次男は「左外鼠径ヘルニア」であること

②手術は鞘状突起の根元を縛っておしまい

③手術は腹腔鏡下手術で行うこと(おヘソの上を7mmくらい切ってそこからカメラを入れて中を確認しながら、足の付け根から針を入れて根元を縛る手術)

④外から症状が見えているのは左だけだが、両方空いていることもままあるため、手術中に右も空いていることを確認したら右も縛るつもりでいること(その時は反対側にも針穴を開けることになること)

⑤再発率は1000人に1人程度あること(縛った糸が切れたり緩んだりすることで起こる)

⑥腹腔鏡手術が困難な場合は術中の判断によって下腹部を2cmほど切開する従来法の手術に切り替える可能性があること

⑦手術の時間は麻酔の時間を含めて1時間前後であること

⑧全身麻酔(笑気、セボフルランという眠らせる効果のあるガス)による危険性について(10万回に1回の死亡率)

⑨傷口の感染症の危険性について(外来で膿を出せば治る程度)

⑩予測できない合併症等が発症する可能性がゼロでないこと

これまで実父や夫の手術に何度か立ち会ってきましたが、「手術にかかる危険性」についての説明は何度聞いても怖いです。

今回は特に、我が子の身に降りかかるかもしれないと思うと不安はひとしおでした。

どれだけ危険性が少ないと言えども、手術に絶対はない以上、同意書にサインする時にはいつも手が震えます。

手術が終わるのを待っている不安な時間にも慣れることはありません。

どうか次男の手術が無事に終わりますように・・・。

手術

手術当日、長男を実家に預け、不安でいっぱいの次男を連れて夫と三人で病院に向かいました。

事前に看護師さんから「次男くんが大切にしているおもちゃを一つだけ持ってきてもいいよ」と言われていた次男は、手術のおともにヨッシーのアミーボを選びました(笑)

前日は午後9時までに食事を済ませ、それ以降は固形物は食べてはいけません。飲み物(水・お茶・スポーツドリンク)は当日の朝6時までは飲んでも良いとのことでした。6時以降は絶飲絶食です。

手術は10時開始。

寝衣に着替えてヨッシーを握りしめる次男の不安そうな顔を見ながら、自分の不安まで次男にうつしてしまわないようにと考えていました。

ストレッチャーに乗せられて次男が一人で手術室に入っていく様子はなんとも言えない思いでした。

頑張ったらご褒美にピカチュウの貯金箱を買ってと私にお願いし、ヨッシーを握りしめて病室に入って行ったけど、本当は(みんなには内緒だけど)アンパンマンが一番好きな次男(笑)

一時間半ほどの間、次男が最初に案内された病室で夫と二人で待っていると、「無事に手術が終わりました」と看護師さんから呼ばれました。

麻酔から覚めたばかりで朦朧としている次男がストレッチャーに乗って手術室から出てきました。

名前を呼んでも返事はなく、目は開いてるけど頭はまだ寝ているような感じでした。

主治医の先生に「右も空いていたので縛りました」と言われました。この機会に両方いっぺんに閉じてもらえて良かったです。

主治医にお礼を告げて次男と一緒に病室に戻り、麻酔が完全に覚めるのを待ちました。

手術に関する説明文の中には、“病室に戻った頃は興奮していることが多い”との記載がありましたが、次男は目を開けたまま30分以上

ボー

っとしていました。

呼ぶと目だけが動いて返事はなし(^^;)

でも突然ムクッと起き上がり嘔吐。

3〜4回胃液を吐きました。

麻酔の影響とのことでした。

そのまま1時間ほどベットの上で安静にした後、お水を飲ませてもらい、嘔吐も治まったので帰宅できることになりました。

食事制限や運動制限はなく、当日から入浴も可能とのこと。

また、縫合に使用した糸は溶けるもので、皮膚の下に埋まるように縫うため抜糸不要とのことでした。

当日の晩方に「痛い?」と聞いたら「少し痛い」と言いましたが、我慢できない痛みではなかったようで、その日の晩はぐっすり眠りました。

傷口は小さく、痛みも少なく、病院にいる時間も少なくてすみ、抜糸もいらず、反対側も一緒に手術してもらえ、術後の外来受診は一度だけ!

子どもにはもってこいのことだらけでした。

この病院にして良かったと思いました。

そして現在、次男が手術を受けてから一年が経過しましたが、傷跡はおへその上7mmの傷の方は皮膚を少しめくると見える程度、両足付け根の2箇所の針穴は目を凝らしても見つからないほど綺麗になりました。

気になっていた足の付け根の膨らみは、もちろんもうありません。

高額療養費と限度額適用認定証

手術に先立って、病院と市役所に電話で“市外の病院に掛かった場合でも乳幼児医療費の免除が適用されるか”を確認しました。

私の住む町では小学生の間の医療費は市で全額負担してくれますが、今回手術を受ける病院のある町では、幼児でも初診料のみ掛かるとのこと。

掛かった費用を立て替えて領収書を市役所に提出すれば、市内の病院に掛かった場合と同様に全額市から支払ってもらえるとのことでした。

ですが、手術費用はどうしても高額になります。高額療養費制度を利用すれば後日戻ってくるとは言っても、手術となると3割の立て替えでも十分厳しい・・・

そんな家庭に優しい制度が「限度額適用認定証」の提示です。

高額療養費制度

手術に掛かった費用を健康保険の負担割合(働き盛りの世代は基本3割負担ですね)に基づいて一旦病院に支払ったあとで申請を行い、限度額以上に支払った額がのちのち(申請後2〜3ヶ月後)払い戻されるのが高額療養費制度です。

※高額医療費の申請書雛型はこちら

限度額適用認定証

高額療養費制度が“一旦3割を病院に支払ってから戻ってくる”のに対し、窓口で支払う時点で限度額まで減額してくれる制度が限度額適用認定証の提示です。

※限度額認定証の申請書雛型はこちら

※最終的に負担する金額はどちらも変わりません。

予め窓口で支払う額を減らしたい場合は、入院や手術が確定した時点で早急に限度額適用認定証の発行手続きをしましょう。

加入している健康保険組合に申請書を送付すると、大体一週間ほどで「限度額適用認定証」が届きますので、保険証と一緒に限度額認定証を病院に提出しましょう。

※70歳以上の方は、上記の申請をせずとも「高齢受給者証」を保険証と合わせて提出することにより、窓口での支払額が自己負担限度額までで済むようになっています。

手術を伴う場合の医療費は高額になります。

お支払いの際に慌てることのないよう、お早目のお手続きをお勧め致します。

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